2019.02.11
<脳生理学> ド忘れ

 ド忘れは大人の脳だけに特有な現象ではない。大人になると、物忘れが増えたように感じるのは、「歳をとると記憶力が低下する」という通俗的な思い込みがあるせいである。子どもも日常的にド忘れをしている。ただ、子どもは物忘れをいちいち気にしない。一方の大人は「歳のせいだ」と落ち込む。人によっては歳のせいにして逃げているのかもしれない。
 子どもと大人ではそれまでの人生で蓄積した記憶量が異なる。100個の記憶から目的の1つの記憶を探し出すのと、1万個の中から検索するのでは、かかる労力や時間に差があって当然というもの。大人のほうが多くの記憶が脳に詰まっているのだから、子どものようにすらすら思い出せなかったとしても仕方がない。これは大容量になった脳が抱える宿命なのだ。ド忘れしたときには「それだけ私の脳にはたくさんの知識が詰まっているのだ」と前向きに解釈するほうが健全だろう。

引用図書;池谷裕二:脳はなにかと言い訳する:祥伝社,2006.

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