2019.05.03
<癒し> 泥棒が治した?強迫観念

 心配性のFLさんにとっては、毎日が戦いです。
 鍵はかけたか、ガスの元栓は閉めたか、電気は消したか等々、確認作業に30分から1時間かかります。出かけたあとも不安になってきて、舞い戻ることも数回。会社に行ってもそれが頭から離れず、心配になって昼休みに戻る。これでは仕事どころではありません。
 つまりは、何か悪いことが起きるんじゃないかという不安をぬぐえないわけです。こういうのを強迫観念と呼ぶのですが、不安が強い場合はなかなか治るものではありません。カウンセラーも苦戦が続きますが、最近では、デジカメや携帯カメラといった便利なものがあるので、これを活用します。
 「閉めたり消したりしたときにそれで写真を撮ってください。不安になったら、それを見るようにすると安心できますよ」
 それで確認作業は、何とか10分くらいでおさまるようにはなってきました。
 ところが、不運なことに、FLさんの住んでいるマンションの一室に空き巣が入るという事件があったのです。FLさんは前よりも不安がつのり、家を出ることさえままならなくなってしまいました。せっかくうまく行っていたのにと、カウンセラーはその泥棒を恨みました。
 ところが、泥棒事件から2週間後、FLさんは妙に明るい感じで現れました。
 「どうしたんですか?」
 「実は、先日空き巣に入られた部屋の人と話したんです。それ以来、その部屋の前を通ると、昼も夜も電気はつけっ放しだし、中からテレビの音や音楽が聞こえてくるもんですから」
 「なるほど、泥棒よけじゃないですか?」
 「私もそうだと思って。そしたら、やっぱりそうだと言ってました。それを聞いて、ああそうか、電気やテレビとかは消し忘れてもいいんだ、と思えるようになったんです」
 この結果、戸締まりと火の元には気をつけているものの、それ以外のことはあまり気にならなくなり、朝の確認は再び10分程度で済むようになったということです。
 こんどは、カウンセラーは泥棒に深く感謝しました。

引用図書;菅野泰蔵 編著:読むだけでカウンセリング:法研,2008.

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