2019.10.07
<歳時記> 想紫苑(おもわれしおん)

 十月の誕生色は野に咲く紫苑の明るい紫。秋の野を代表する花です。
 「しおん」という美しい名前は漢名をそのまま音読みしたもので、台風に倒れてもいち早く立ち直る花としても知られています。
 昔、親を亡くした兄弟がいて、兄の方は忘れ草である萱草(かんぞう)を、弟の方は思い草といわれる紫苑を、そのお墓に植えました。兄は親のことを忘れてしまいましたが、弟の方はいつまでも覚えていたということです。
 この話に鬼も感動したので、紫苑は「鬼の醜草(しこくさ)」と呼ばれるようになったとか。ちょっとひどい名前のようですが、「醜」とは強いという意味なんです。
 かよわそうに見えますが、どんなに強い風が吹き荒れても、心には決して忘れない思いを秘め、倒れてもすぐ起き上がる…。
 風の強い日は、野でその風に耐えているであろう紫苑の花を想います。

引用図書;山下景子:美人の日本語:幻冬舎,2005.

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