2019.12.09
<心理学> うつ

 (前略)しかし現代では、社会の枠組が大きく変わってしまいました。非常に不安定で、成果主義的で、人をじっくりと育てたりサポートしたりすることなどできない、自己中心的な社会になっています。だから、どんなに律儀で几帳面で真面目であっても、それは評価されません。律儀でなくても成果を上げてくれればいいというような風潮となり、あるいは次々に転職をくり返していくような人たちが増え、たとえその場しのぎであっても、自己主張やパフォーマンスが目立てばもてはやされるような社会になっています。
 つまり、律儀なうつ病予備軍の人たちを守るようなきっちりとした構造がない社会なので、彼らの人格の鎧が機能しなくなってしまい、傷つきやすいナイーブな部分や攻撃的な部分が露呈しやすくなり、なかなか中に収めることができない時代になっているのではないかと理解しています。
 その意味では、うつ病の患者さんに対して、傷つきやすい自己愛を理解し、健康な攻撃性や穏当な自己主張を取り戻していく援助をするような心理(精神)療法が、薬物療法だけではなく、治療として非常に重要になってくると思います。
 これまで述べてきた精神分析(的精神)療法は、うつ病の治療として用いられていますが、単にうつ病の症状をよくするだけではなく、その人のパーソナリティを変化させ、新しい人生を切り開く契機を創造することがあります。この治療では、患者さんがそれまで意識してこなかった悲しみや不安、葛藤などの理解を治療者と共有し、見つめ直すことによって、「うつ」という悪循環に入らないですむようになります。それに加えて、新たな視点から自身の感情体験を見直すことによって、新たな対人関係のとり方や行動パターンを選択することさえ可能になるので、治療以上の意味をもっているかもしれません。その意味では、再発予防にもつながります。(平島奈津子)

引用図書;四天王寺カウンセリング講座10:創元社,2011.

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