2020.08.29
<心理学> 治療の足を引っ張る7つの考え方⑦「すきま時間は活用すべき」?

 最近の傾向の一つとして、「すきま時間の活用」「常にスキルアップ」など、あらゆる時間的空間を利用して自己を向上させよう、というような風潮があるように感じます。健康な人でも、ボーッとすごす時間に罪悪感を抱くような傾向があり、もともと具体的な問題があったわけでもないのにだんだんとうつ病に向かってしまうことすらあります。気分変調性障害(慢性のうつ病)の人にとって、これはもちろん危険な風潮です。ただでさえ、自分は何かすべき努力を怠っているのではないか、という気持ちを持っているのですから、そこを直撃するようなものなのです。
 そのような考え方に翻弄されそうになったときに必ず思い出していただきたいのは、「気分変調性障害の人は、ふつうに暮らしているだけでも努力しすぎているくらいだ」ということです。本来は病気なのですから、病気にエネルギーを使っている分、通常の生活では休息が必要なのです。それなのに、多くのケースで、病気であることを隠して「ふつう」に暮らしているわけですから、すでに働きすぎです。必要なのは、むしろ「もっとすきま時間を増やすこと」です。二重うつ病になっている人に至っては、さらに強く意識して、「何もしないこと」に専念する必要があります。
 特に重要なのは、頭を忙しくしないことです。軽い散歩などはうつ病の治療にプラスの側面もあるのですが、頭の中を忙しくすることには何のプラスもありません。「何かしなければ」という思いに駆られたときにすべきことは、「何かをすること」ではなく、「いや、今は何もしないことが仕事なのだ」と思い出し、頭にも「しばらくボーッとしていなさい」と命じるようにしてください。

引用図書;水島広子:対人関係療法で治す気分変調性障害,創元社2010.

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