2020.09.14
<カウンセリング> 大切な家族がうつ病になったら ⑥うつ病の親を持つ子どもに配慮したいこと

 親のうつ病が子どもに大きな影響を与えるということは、いろいろなデータから明らかにされてきました。そのプロセスが詳しくゎかっているわけではありませんが、臨床的な観察からは、まず、親の気力の低下によって子どもに十分な愛情を表現してあげられなくなること、親のいらだちや不安など精神的な不安定さに子どもが振り回されること、うつ病のときに症状としてあらわれる「もののとらえ方のゆがみ」が子どもにネガティブな影響を与えること、などが考えられます。
 子どもというのは、親の顔色をよくうかがうものです。親が不幸そうにしていると、「自分が何とかしてあげなければならない」と思います。これは裏返して言うと、親が不幸そうにしていると、常に「自分の努力が足りないのではないか」「自分は人間として何かが足りないのではないか」と思うようになるということなのです。それが自尊心を低下させ、子ども自身のこころの問題につながっていきます。
 親がうつ病だと子どももうつ病になりやすいということがどういうプロセスで起こるのかということについては正確な結論が出ていませんが、遺伝と環境との両方の側面があると一般に考えられています。うつ病という病気が遺伝するわけではないとしても、うつ病になりやすいような責任感の強い性格は遺伝します。そして、親がうつ病であるために、子どもが無力感を抱いたり「自分には価値がない」と感じたりするような環境が作られてしまうと、子どもはうつ病を発症しやすくなるでしょう。
 これらの問題を克服するためには、対人関係療法の「病気の強調」がとても役に立ちます。親は「不幸」なのではなく、「病気」にかかっているだけであり、それは専門家がきちんと面倒を見ているから心配しなくても大丈夫だ、ということを子どもにも学んでもらうのです。そして、その「病気」の症状として、親は愛情表現を適切にできないし、イライラしていることが多いけれども、本当は子どもを心から愛しているのだ、ということを説明してあげるとよいのです。うつ病である親自身も、一度きちんと子どもにそう説明し、余裕があるときには言葉にして愛情表現をしてあげればよいでしょう。そうすることで、「自分は親として失格だ」という気持ちが少しは和らぎます。
 そして、周囲もそれに合わせて一貫した対応をとっていったほうがよいのです。うつ病を正しく理解することの大きなプラスがここにあります。つまり、周囲がうつ病を理解せずに、「怠けているのではないか」という不満を何となく鬱積させていると、それが子どもにも伝わります。子どもはまわりの人から不満を抱かれている親のことがとても心配になり、ますます問題が大きくなります。そうではなく、周囲が率先してうつ病を理解し、「病気だから、ああいうふうになるんだね。早く治るといいね」というようなことを子どもに言ってあげると、子どもは安心します。子どもは子どもでいることを許されるべきであり、親の「保護者」役をさせないことが重要です。
 親がうつ病で入院するような場合も、ふつうの病気の入院と同じように説明すればよいでしょう。子どもの寂しさを認めると同時に、治る病気で、必ず戻ってくる、ということを説明して安心させることができます。また、子どもは親が自分のことを見捨ててしまったのではないかということが常に気になりますので、入院中の親はちょっとした手紙でもいいですから、「早くうちに帰って○○ちゃんに会いたい」「○○ちゃんに会えなくて寂しい」「早く病気を治して○○ちゃんにご飯を作ってあげたい」というような愛情表現を可能な限りしてあげましょう。
 大切なのは親の愛情を表現することです。ありがちなことですが、「○○ちゃんがいい子にしているか心配です」「勉強をがんばってくれれば安心だ」というようなことばかり言っていると、子どもは親を安心させたい一心で、不健康な「いい子」になってしまうことがある、ということも覚えておきましょう。親の現状についてある程度の安心ができることと、親からの愛情を確認できることが、子どもの成長を本質的に安定させます。

引用図書;水島広子:対人関係療法でなおすうつ病:創元社,2009.

一覧へ >